症例〔首と肩の症状〕
当治療室の症例の一部を紹介しています。
同じ病名や症状であっても、効果には個人差があります。
*このページは2022年に追加作成しました。2021年後半以降の症例を掲載しています。
症例3 横からの追突事故 振り向けない首の痛みと右腕の重さ
来院者: 20代女性 期間:2021年10月~12月 通院回数:5回 通院頻度:1週間に1回 症状: 訪問入浴サービスに従事している方。10日ほど前に、車で移動中(来院者は助手席)に出会いがしら事故(運転席側からの追突)に合い、その夜から首と上肢に症状がでる。 首の痛みのため振り向くことができない。また右上肢(利き腕)のしびれと重さのため「箸でおかずをつまむことがうまくできない」。仕事ではバスタブに仰向けに横たわった利用者の頭を自分の右腕で下から支えるのがつらい。事故の数日後に職場復帰をしているが、整形外科での局所への温熱療法では変化なく、他の選択肢として来院された。 施術と経過: 側頚部で、右側の緊張が強い。背中に触れると、肩甲骨の内縁や脊柱起立筋でも右側の緊張が強い。手や足のツボに鍼をして首の緊張をゆるめたところ、右側に振り向けるようになった。右上肢のしびれはまだ残る。 2診目 来院時、右上肢のしびれは消失していて、重さのみが残っていた。右上肢の重さの改善を目的に手に鍼をした。 3診目 来院時、右上肢の重さは腕全体ではなく、肩のみ(三角筋周囲)に狭くなっていた。しかし、首や腕の症状が軽くなってきてから「右下半身にもだるさがあることに気づいた」。だるさはとくにふくらはぎで強く「そのせいで早く歩けない」とのこと。右足に緊張の強いところがあったため、そのツボに鍼をした。 4診目 来院時、歩行時のだるさはかなり減少。右肩の重さは「たまに」起こる程度に減少しているとのこと。前回と同様の施術をする。 5診目 前回からの1週間、右肩の重さはなく、歩行の問題もなかった。前回と同様の施術をして終了とした。 まとめ: 首肩と腕への症状には、痛みを起している局所ではなく、原因点に鍼をすることで動きの制限をすみやかに取り除くことができた。また、今回の事故は横からの追突によるもので、腰もその衝撃を受けていた。足の緊張が緩むことで腰や首・肩の緊張も緩んだという結果には、連動関係が現れている。
症例6 肩の痛みで後ろポケットに手が届かない
来院者: 80代男性 当院は女性専用治療室ですが、通院中の患者様のご家族に限り,男性の施術をしています 期間:2021年8月~2021年12月 通院回数:10回 通院頻度:2~3週間に1回 症状: 5か月前に換気扇の掃除をした後に右肩の痛みを感じたが、日常動作では不便を感じない程度の調子が続いていた。2週間ほど前よりその部位の痛みが強くなり、ロキソニンを使用している。ベストを脱ぐ、後ろポケットに手をいれる、腰に手を当てる動作で、右肩の後面が痛む。きおつけの姿勢から腕を真横に上げる動作は90度から違和感がでる。 施術と経過: 1~5診目 肩に関連する股関節の動きをチェックすると肩と同側の股関節に緊張が強い部分があった。まず腰や足に鍼をして股関節の状態を整えた。また、脊柱のツボなどで肩関節の動きを調整した。 6~7診目 腕を体の真横から上げる時、患側のみ肩が縮こまる(胸を開けない)。その点を改善してゆくと、肩関節の可動域が広がった。 8~10診目 肩を動かしたときの痛みは「コリ感」「つっぱり感」に変わってきて、日常生活の不便感はだいぶ少ない。10診目の来院時に、「肩は完治した」とのことだったので、前回と同様の施術をして終了した。 まとめ: 肩の動きは複雑なので、いろいろな部位からの影響を確認する必要がある。それらをひとつずつ改善し、肩の可動域が正常に戻った。
症例9 妊娠中の症状 つわりで動けず痛めた肩と腰
来院者: 30代女性 期間:2022年8月 通院回数:1回 症状: 第2子妊娠中(16週)の妊婦さん。つわりが重く、寝たきりが続くにつれ(一時入院治療もあり)、左の首肩と腰に痛みがでてきた。また、10 日ほど前からつわりが軽快し、少しずつ起きて生活することができるようになったところ、長男にだっこをせがまれ、腰痛はさらに悪化した。 施術と経過: ずっと体の左側を下にしていたとのこと。首を右に倒す動作では左の首すじの広い範囲に強いツッパリ感がおこる。また、頭と首の境(左側)のあたりに、強い痛みを感じているポイントがあり、その部位の硬さを確認した。 腰は、椅子から立ち上がる動作や前かがみ動作で右より左腰が痛む。 手や足のツボに鍼をしたところ、左の首すじのツッパリ感が消失。頭と首の境にあった強い緊張もゆるみが見られた。臀部とふくらはぎにも強い緊張があり、側臥位でその部位に鍼をすると、左腰の痛みを感じることなく前かがみ動作ができるようになった。 まとめ: 同じ姿勢で寝ていたために、圧迫されていた肩と腰に痛みが起った。それぞれの緊張を起している原因点に鍼をすることで症状を解消することができた。
症例18 4~5年前に五十肩になってから消えない右肩痛
来院者: 50代女性 期間:2023年3月~4月 通院回数:6回 頻度:1~2週間に1回 症状: 右肩周囲の複数の場所に「ズキン」「ドーン」という痛みが突然起こることが、4~5年前の五十肩以降続いている。痛む部位は、肩関節の前面、三角筋の停止部、および肩甲骨の内縁など。結帯動作での痛みのほか、安静時(椅子に座っている時や仰臥位)でも起こる。1回あたりの痛みは数分間続き、反対の手で右肩を抱えるように抑えて痛みが治まるのを待つ。頻度には波があり、調子が良ければ4~5日間痛みなく過ごせることもある。1年前の頸椎のレントゲン所見は異常なし。介護職の方。 施術と経過: 首・肩・背中に触れると、患側で緊張が強い部位が複数ある。また、ベッドに腰かけた状態で、患側の肩の高さが低い。手・肘・足・腰などのツボを使用してこれらの解消を目指し、日常生活での痛みの状況(強さ・部位・頻度など)をフィードバックしてもらい施術をすすめた。 2診目 施術後、右上肢全体が重だるくなるが、肩はとても軽い。肩上部の高さの左右差が小さくなった。 3診目 来院時、右肩の「ズキズキ」が起こる頻度は変わらないが、「『うっ』と動けなくなってしまうような強い痛み」ではなくなっている。頭痛や肩こりも全くなかった。 5診目 初診時に訴えていた部位は、痛みが「起こっても気にならない程度」に。現在は、肩上部と肩甲骨外縁が痛む。 6診目 痛みの強さは、初診時10→5~6に。頻度も減少。肩の高さが左右同じになる。 (6診目の2週間後)痛みの強さは3~4に。頻度も更に低くなり、1週間以上痛みが起こらないこともある。「以前より調子良く過ごせている」とのことで、いったん施術を終了して様子を見ることにする。 まとめ: 五十肩をきっかけに、背中の深い部分が長期にわたり緊張してしまっていたと思われる症例。その部位が緩むと、三角筋の痛みも軽減された。背中の状態は上肢や腰臀部からも影響を受けることがあり、本件もお仕事では上肢に負担がかかっており、腰痛も同側(右側)にある方であった。それらを考慮し遠隔からの施術を行ったところ、変化が見られた。
症例20 寝違い 座ってじっとしている姿勢でも首が痛い
来院者:30代女性 期間:2023年4月 通院回数:1回 症状: 来院日の朝、起床したら首全体が痛かった。痛みのため、右にも左にも首を動かすことができない。 施術と経過: ベッドに腰かけた状態でゆっくり首を動かしてもらったところ、回旋(振り向く)動作は左右どちらも45 度まで、側屈(頭を真横に倒す)動作は左右どちらも30度までしか倒せない。首~肩に触れてみると、右側に緊張がとても強いポイントがあり、そこが原因で首全体に影響していると推測した。 始めにふくらはぎのツボにハリをしたところ、首の右側の緊張が少し緩んだ。 続いて、骨盤のツボにハリをしたところ、いつものように首を左側に倒せるようになった。残っているツッパリ感を解消する目的で背中に2か所ハリをして、首を動かしていただいたところ「だいぶいいです」。 施術中をすすめる際の「ベッドに横になる」「ベッドから起き上がる」動作についても、初めは首の痛みのためゆっくりと慎重に行われていたが、施術後には首をかばうことなくできるようになった。 「施術の翌日は軽い違和感は残ったものの、問題なく日常生活をおくることができた」ことを、2週間後に来院されたときに確認。 まとめ: 「首をどちらに動かすのも痛い」とのことで痛みを起さないような固まった姿勢で来院された。「左右どちらも痛い」という自覚症状であっても、ほとんどの場合、より症状が重い方があり、そちらに原因点がある。本症例では原因は右側にあった。その部位を調整することで「左右どちらも痛い」症状は解消することができた。
症例27 6か月前から続いている右半身の不調
来院者:40代女性 期間:2023年 7月~8月 通院回数:3回 頻度:1週間に1度 症状: 月経不順の改善を目的に6か月前に婦人科を受診し、女性ホルモンの処方を受けた。その頃より、首肩こり、おなかの痛み、腰~骨盤周りの痛み、下肢の重だるさなどが、右半身にのみ起こっている。月経不順には改善がみられないことから来院2週間前くらいに薬の使用はやめたが、右半身の不調は残っている。 施術と経過: 体に触れると上半身・下半身ともに右側の緊張が強く、首の動きも右側に制限が大きい。また、下腹部で右側に強い冷えがある。 首・肩・背中の緊張を緩める目的で、手・足のツボを使って施術。 2診目(1週間後) 前回の施術後、右半身の不調はすっきりと軽くなったが、その後徐々に戻ってしまった。おなかは、冷えはあるが痛みは消失している。 3診目(1週間後) 右半身の不調はすべて消失している。前回の施術のあとは、深く眠ることができた。 状態を維持する目的で、これまでと同様の施術を行った。 まとめ: 「ホルモン剤を服用すると体が消耗する感覚がある」と、薬によるからだへの負担を実感されていた。 施術においては、ホルモン剤という原因にとらわれることなく右半身に現れている緊張を調整していったところ、肩や腰の痛みやだるさだけでなく、内臓(おなか)の症状も改善することができた。 当院へは生理不順の改善を主訴として来院されたが、体の左右のアンバランスが全身にわたるため、先に調整しておく必要があると考えた。主訴については、このあとも施術を継続。
症例33 治りきらない2週間前の寝違い
来院者:30代女性 期間:2023年12月 通院回数:1回 症状: 2週間ほど前、起床したら首から肩にかけて痛みがあり、湿布薬を3日間使用。それ以来、寒い日などに痛みが再発しがち。来院前日にも痛みが起こったので、以前こちらに来院されたことがあるご家族からの紹介でご連絡をいただいた。 施術と経過: 来院日にはピーク時ほどの強い痛みはなかったが、首の状態を確認すると、左側に振り向く動作で左肩につまり感がある。また、首と頭の境目のあたりで左側の緊張が強い。 これらを緩めるために、肘のツボに鍼をしたところ、左側へ振り向くことができるようになった。次に、ふくらはぎのツボに鍼をしたところ、左側への振り向き動作がもっと軽くなった。 **2週間後に、「再発していない」ことをLINEでうかがうことができた まとめ: 寝違いは放っておいても治ることがあるけれど、本件のように長引いてしまうこともある。痛い場所に湿布を貼っても治らない時は、患部(首)以外の場所からの影響をうけていると考えられる。本件では手や足のツボで解消することができた。
症例39 肩首から頭にかけての締めつけ感
症状: 肩から首へ、そして頭へと広がる締め付け感が数日前から続いている。以前にも同様の症状があり、その時はCT検査を受けた(検査結果は異常なし)。マッサージは疲れが残るので苦手なので、鍼治療を受けてみようと思った。日常生活では介護ストレスが強い、とのこと。 来院者:70代女性 期間:2024年3月 通院回数:1回 施術と経過: 座った状態で首の動きを確認。後頚部や肩の緊張が左右ともに強いため、上を向く、下を向く、振り向く・・、などの複数の動作で可動域が小さい。 はじめに後頚部の緊張を緩めるためにふくらはぎのツボに鍼をした。天井を見る時の首の後ろのつまり感がほぼ消失。 次に、肩の緊張を緩めるために手と足の甲のツボに鍼をした。下を向きやすくなり、振り向く動作もできるようになった。頭の締め付け感もほぼ解消された。 この1週間後に、「肩も首も大丈夫です」との経過をうかがえた。 まとめ: 首をスムーズに「動かせる」ように首の動きと連動している手足のツボを調整したところ、首肩まわりが軽くなり、頭の締め付け感も大きく解消された。本症例のように、手や足の緊張が首肩こりに影響することはよく見られる。
症例44 スチームアイロンをかけ続けた後に固まってしまった首
症状: 来院1週間ほど前から、首が固まってしまっている。首~肩の痛みのために、下に向けない、天井を見ることができない、左側に振り向くことができない。仕事でハンガーにかかっているたくさんの服にスチームアイロンをかけた後に発症。以前にも、同様の症状が鍼灸で改善した経験がある。今回は、女性専用の鍼灸院である当院を見つけて来院された。 来院者:40代女性 期間:2024年5月 通院回数:2回 通院頻度:1週間に2回 施術と経過: 施術ベッドに腰かけた状態で首の動きを確認。前屈・後屈はそれぞれ15度程度。また、左方向に振り向くことはできない。 首の後面に緊張の強い部分がある。関連するふくらはぎのツボに鍼をしたところ、少し下に向けるようになった。 次に、左の肩甲間部の緊張に注目し、関連する手足のツボ4カ所に鍼をした。下にしっかり向けるようになった。 最後に、座った状態で背中のツボに鍼をすると、左方向に振り向くことができるようになった。 2診目(4日後): 湿布薬を使わず過ごせているが、うがいのような上を向く動作はできない。 首の後面の緊張が強い部分に注目。関連する腰のツボに鍼をしたところ、首を45度まで後ろに倒すことができた。 次に、首の後面にある別の緊張点を緩めるために背中のツボに鍼をしたところ、顎をあげて天井をしっかり見ることができるようになった。 首の後ろにわずかなつまり感が残るものの、首の動きの不自由がほとんど解消されたので、施術を終了した。 まとめ: 首の多方向への動きが制限されてしまっていた症例。首の筋肉の過緊張は、この症例のように手足、背中、腰などいろいろな部位が原因になることがある。
症例46 息苦しさを伴う肩こり
症状: ピアノ講師をされている方。イベントに向けて練習量を増やしていたところ、1か月前より首~肩~背中が少しずつ重くなり、来院時には肩こりのために息苦しさもあるほどに。本番まであと2か月なので、できれば練習量を減らしたくない。 10代の頃から、ピアノの練習によって首肩こりがつらくなった時は鍼灸でケアされてきたとのこと。 来院者:40代女性 期間:2024年6月~7月 通院回数:5回 通院頻度:1週間に1回 施術と経過: 首肩~背中の広い範囲に緊張がある。まずは、左右全体を緩める施術をして様子をみることにした。手足のツボを使って施術したところ、肩の重さが軽減し、振り向きやすくもなった。 2診目:初診の後は調子がよく、練習ができた。しかし、3日目くらいから再び肩上部がつらくなり、今回は腕全体も重だるい。右腕がよりつらいというお話を聞き、背中にも右側に深いコリを確認したので、今回はその部位の改善に焦点をしぼることにした。関連する手足のツボに鍼をした。局所(背中のツボ)にも鍼を加えた。 3診目:右肩~背中の状態は良く、「気にせず過ごせている」。胸が開かない感覚があるとのことで、対処した。 4~5診目:右上肢が疲れることはあるが、肩~背中には強いコリ感を感じることがなくなったので、以前のようにつらくなることはない。同様の方針で施術。ピアノの練習もできている、とのことなので5診目をもって通院を終了とする。 まとめ: 広い範囲にコリを感じる場合でも、痛みの中心点を見つけることが重要。本症例のように、背中の深い緊張が首肩こりの原因になっていることは多い。